大阪市営地下鉄今里筋線の延伸計画は、採算性の問題から長い間凍結された状態です。
今里筋線の採算性が悪いのは、路線内のどこにもターミナル駅と直結しないため、そもそも乗降客が少ない点があります。
大阪市営地下鉄の路線別収益でも、今里筋線は南港ポートタウン線を除けばダントツの最下位。赤字額も常に長堀鶴見緑地線と最下位争いを演じています。
このような状況ですから延伸凍結もやむを得ないのですが、沿線住民などからは延伸の要望が根強くありました。
来年には大阪市営地下鉄が民営化されますが、そうなればますます今里筋線の延伸は遠くなるでしょう。
大阪市営地下鉄の民営化に関しては、市議会で自民党などが反対。
延伸区間をめぐっては、自民党が地下鉄民営化基本方針案に賛成する条件として、整備に向けた基金創設やBRT社会実験の実施などを要望し、吉村市長は基金創設には反対しもののBRTの社会実験を行うことにしていました。
地下鉄民営化の条件としてのBRTの社会実験のルートが明らかになり、今里筋線の実質的な延伸が実現される可能性が出てきました。
大阪市のBRT社会実験が2019年スタート
大阪市が実施するBRT社会実験のルートが明らかになりました。
うおおおおおBRT!!!!
大阪市 今里筋線延伸の代替案「BRT」運行計画を公表(関西テレビ) – Yahoo!ニュース https://t.co/Nu533UevpC
— Osaka-Subway. com🚇 (@207GMP) December 7, 2017
運行ルート案は今里から杭全を経由して湯里6丁目で西へ向かい長居まで向かうルート。
もう一つが杭全で西へ向かいあべの橋(天王寺)へ向かうルートです。
BRT(バス高速輸送システム)は、バスの柔軟性と都市鉄道の利便性を兼ね備えた交通手段で、地下鉄などと比べて建設コストが格安な点が大きな利点です。
利点が多いBRTですが、世界でも導入が相次いでいますが、日本では東日本大震災によるJR大船渡線・気仙沼線に鉄道の「仮復旧」で導入されたのが有名です。
その他新潟市などで導入例がありますが、BRTは主要都市の都心ではなく郊外や地方都市で行うものというイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし、BRTは東京でも導入されることになっており、築地市場移転問題ではテレビでもよく話題に上がった「環状2号線」の延伸部分に整備されます。
BRTでの延伸のメリットは?
今里筋線のBRTでの延伸のメリットは、実現がほぼ不可能となっている今里筋線の今里から先が地下鉄ではないもののとりあえずは延伸する形になることです。
ちょうど地下鉄四つ橋線から南港のニュートラム(南港ポートタウン線)に乗り換えるようなイメージに近いでしょう。少し不便ですが、一般のバスとは異なりBRTで渋滞のないのは大きなメリットです。
BRTの運行は、今里筋線並の1時間3本の頻度で計画を行っているようで、ある程度地下鉄とBRTとの接続もはかられるのではないかと思われます。
BRTがどれほどの所要時間になるかがわからない段階では、そのメリットが表面化しにくいですが、所要時間によっては、大阪市北東部から大阪府南部へのバイパス路線にもなるかもしれません。
ただ、バイパス路線といっても、今里筋線自体がほとんどどの他社鉄道との乗り換えとして利便性は高くなく、あるのは関目成育駅と京阪関目駅ぐらいで、それほどバイパス路線としての役割は期待できないでしょう。
運行ルートはどちらが良いか?
大阪市のBRT社会実験は、今里から湯里6丁目を基本としていますが、長居まで運行するものとあべの橋まで運行するものの2つのルートになります。
2つのうちどちらが良いかというと、ターミナル駅を結ぶ事となるあべの橋までということになるでしょう。
本来の湯里6丁目を向かうルートであれば、あべの橋は通ることがないです。
しかしあべの橋を通ルートも計画されたということは、そもそも湯里6丁目へ向かうだけなら、利用者が少なくてBRTがとても成り立たないという予測もあったのかもしれません。
大阪市のBRT社会実験がどれほどの利用者を集めるかが注目されます。
BRTが導入され地下鉄ではないもの赤字路線の延伸が実現すれば、全国で延伸が凍結されている路線の新しいモデルともなるかもしれません。