相鉄(相模鉄道)は現在東京都心まで直通で行くことができず、乗換を強いられることになります。
東京都心への直通運転は相鉄の悲願であり、同社設立100周年を今年2017年12月にもむかえますが、その時までには実現したかったという思惑はあったでしょう。
しかし、度重なる延期により相鉄の都心への直通運転は未だ実現せず、当初の計画よりも遅れていて今後もさらに開業が遅れる可能性もあります。
また、JRとの直通運転では横須賀線を通る予定ですが、その横須賀線も湘南新宿ラインの最近の増発により通過する列車が増えています。
そのため、品鶴線との合流点である旧蛇窪信号場の平面交差がダイヤ上のネックとなっており、さらに相鉄の直通運転で横須賀線通過列車が増えるとなると問題が大きくなります。
旧蛇窪信号場の平面交差を解消する方法として、「大崎短絡線」の構想がありますが、相鉄都心直通運転と合わせてその行方が気になります。
遅れている相鉄の都心直通運転開業
相鉄の東京都心直通運転はJRと東急2つの間で行う予定です。
相鉄・JR直通線は、相鉄線西谷駅とJR東海道貨物線横浜羽沢駅付近間に連絡線(約2.7km)を新設し、この連絡線を通ってJRとの相互直通運転を行います。
一方相鉄・東急直通線は、JR東海道貨物線横浜羽沢駅付近と東急東横線・目黒線日吉駅間に連絡線(約10.0km)を新設し、この連絡線を通って東急との相互直通運転をする計画です。
イメージ図。
出典 相模鉄道株式会社
相鉄の相互直通運転は、当初2015年度中には開業する予定でしたが、度重なる開業延期で現時点での開業予定は、JR直通が2019年下期、東急直通が2022年下期となっています。
相鉄線、JR・東急との直通運転を延期 最大3年半遅れ
工事が遅れるだけでなく事業費もこの遅れによって増額しており、当初の見込みの2739億円から約1300億円ほど増え4022億円になると想定されています。
大崎短絡線の行方
相鉄がJRとの相互直通運転では、横須賀線から湘南新宿ライン・埼京線への乗り入れが有力視されています。
ただ、相鉄が埼京線へと乗り入れするとなると、運行本数が増え、旧蛇窪信号場の平面交差の問題がさらに悪化することが懸念されています。
平面交差の問題を解消する手段として考えられているのが「大崎短絡線」の建設です。
平面交差と大崎短絡線のイメージ図。
大崎短絡線によって平面交差の問題が解消され、ダイヤ改正で大幅な増発も可能になります。
かつての池袋駅付近での平面交差を解消したことによって、大幅に増発が可能となったような効果が期待されるわけです。
大崎短絡線の予定地付近ではすでに紹介したこちらの大規模再開発が行われているわけですが、
このように囲みがあり、大崎短絡線のためにJR東日本が用地を確保しています。向こうに見えるクレーンが「西品川一丁目地区市街地再開発事業」のマンション建設です。
大崎短絡線が通るため若干広くなってる歩道。実質的に自転車通行スペースがない日本では常にこれぐらいの歩道の広さが欲しいところですが(^_^;)
横須賀線の線路です。大崎短絡線はこの辺りから分岐していく予定です。
さらに拡大。
ご覧の通りカーブもきつく、また住宅密集地域ということで大崎短絡線はクリアすべき問題がたくさんあります。
相鉄とJRとの相互直通運転の開業が延期になっていますが、直通運転の延期とともに大崎短絡線の行方も先延ばしになっているともいえます。
相互直通運転のデメリットも
相鉄が東京都心に直通することで乗換の手間がなくなったり、横浜駅などの乗換駅の混雑緩和などのメリットがあります。
メリットばかりが目立つ相互直通運転ですが、デメリットもあります。
路線構造が複雑になる
相互直通運転をすることにより、路線構造はより複雑になります。列車も様々な行き先表示になり乗車の際に戸惑う人もいるでしょう。
行き先表示は、慣れの問題もあり毎日利用する人にとっては、さほど問題でもないかもしれません。
ただ、日本は観光立国を国の重要な成長戦略に掲げています。さらに東京など首都圏では国家戦略特区にも指定し、外国企業を呼び込もうという動きがあります。
多くの外国人にとって、東京周辺の路線網は複雑で理解が難しいですが、直通運転が増えることでさらに難易度は上がります。
観光立国や国家戦略特区を推進する上で、複雑すぎる路線網はプラスではなく、マイナスへ働く効果が高いでしょう。
現在は外国人だろうが日本人だろうが誰にとっても使いやすいものにすべきユニバーサル・デザインの時代です。
遅延を起こしやすくなる
相互直通運転によって、自社だけの遅延ではなく他社の路線の遅延によってもダイヤが乱れることがあります。
例えば相鉄とJRの直通運転によって、相鉄の遅延がJRにも及ぶというものです。相互直通運転が増えれば増えるほど、それだけ遅延のリスクも増えるともいえます。
相互直通運転は建設費がかなり必要な場合もあります。相鉄の相互直通運転も開業の延期や工事費の高騰によって、さらに建設費が増大しています。
相互直通運転が、それだけの費用に見合うかどうかは少し考える必要があるでしょうが、首都圏の路線網もほぼ完成した状態で今後の予定はあまりありません。
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