関西国際空港へのアクセス時間を大幅に短縮できるなにわ筋線ですが、なかなか構想から建設までの道のりは容易ではありませんでした。
しかし、ここ近年その流れが一変。一気になにわ筋線の建設へと向かいました。
建設へと向かった大きな要因が、「訪日外国人旅行客の増大」であることは間違いありません。
低迷していた関西国際空港が急激に旅行客を伸ばしたのは、訪日外国人の激増があったからです。
訪日外国人旅行客市場が活性化する中、鉄道会社も地元自治体も関空アクセスの改善の必要性を強く感じ、建設に前向きになっていったわけです。
ただ、気になるのは訪日外国人旅行客が今後も増え続けるのかどうかということ。
もしも訪日外国人旅行客の流れが変わってしまうと、なにわ筋線が成功するかどうかにも大きく影響を与えてしまいます。
大阪や関西を訪れる外国人旅行客の急増
大阪や関西各地を訪れる外国人旅行客が急増しています。
2009年に大阪府に訪れる外国人旅行客が170万人だったのに対して、2016年は941万人。1000万人の大台も見えてきました。
出典 大阪観光局
この数字は東京都の数字と比べると、その伸びの大きさがより鮮明になります。
出典 東京都産業労働局
東日本大震災が起こった平成23年、つまり2011年は約410万人だったのが、昨年2016年は1310万人。
東京都も伸び率は驚異的に高いのですが、大阪府はそれ以上の数字で東京と大阪の差が縮まっています。
特に2014年以降の伸び率がものすごいです。この理由は一般的にはLCCの就航や円安によるものとよくニュースでは流れます。
また大阪観光局の統計でもわかるように、大阪府へ訪れる外国人旅行客が伸びている背景には、周辺アジア諸国からの伸びが高いのが目立ちます。
関空アジア重視へ
関西国際空港は、欧米の長距離便がないことが弱点だとよく言われます。
特に近年は、テロなどの影響によって、特に欧州へ訪れる日本人旅行客が減少しているため、長距離便の撤退や減便が相次いでいます。
これまでは、関西エアポートとしても、着陸料を柔軟に割り引く制度などで長距離便の誘致を目指すという考えを表明していました。
しかし、こちらのニュースでは欧米も力を抜いていないものの、アジア重視の姿勢を打ち出しています。
関空、新路線アジア重視へ 山谷社長「欧米も力抜いてない」
記事によると、欧米のような強距離路線では特にビジネスクラスを埋めることが航空会社の収益上重要になってきます。
しかし、日本の経済は東京一極集中になっているため、関西へは特に欧米からのビジネス需要が少ないのです。
ですから、どうしてもフルキャリアサービスの航空会社が路線開設に向かわないのです。
現在、日本経済自体が世界の中では少し影が薄いですから、なおさらですね。
それよりも、成長著しいアジアからの新路線開設により力を注ぐほうが得策だという経営判断です。
この判断自体は間違いがないのではないかと思います。なぜなら、今後爆発的に航空需要が伸びていくのは、世界の中ではアジアだと言われています。
いわば周辺に宝の山が眠っているいるわけですから、そこに注視するのは当然かなとも思えます。
特にアジア諸国から大阪へは東京へ行くよりもおよそ1時間ぐらいフライト時間が短くなります。
大阪が目的地でなくとも、大阪以東なら東京へ一旦行くより合理的と言えますし。
大阪は意外に外国人旅行客から評価されている
「大阪は観光で見る場所が少ない」とよく言われます。実際に地元の人もこのように思っています。
ただ、意外にも大阪は外国人旅行客から評価をされています。
例えば黒門市場なんかは最近は外国人旅行客がたくさん訪れますが、以前までは国内旅行者が訪れるメジャーな場所ではありませんでした。
これはひとつの例ですが、思い込みによってせっかくの魅力をアピールできていないというのは、たくさんあると思います。
外国人だけでなく日本人経営者でも同じように感じている人はいます。人々を驚愕させたのが、あの星野リゾートが大阪の新今宮に進出するというニュース。
星野リゾート、大阪新今宮ホテル進出の真意
記事の中で星野社長はこのように語っています。
「昔から知っている人は、この場所の価値を過小評価している。私も案件にかかわってから、このエリアを散々歩いてきたが、魅力的で面白くて、良い場所だ。」
また、新今宮に限らず、大阪ではいわば猥雑な街は、まだまだあります。例えば鶴橋、京橋、十三、天満など外国人受けは高そうです。
阪急がなにわ筋連絡線を開設するにあたって、十三が観光のポテンシャルがあることにもしかして気づいているかもしれません。その可能性は低いでしょうかもしれませんがね(^_^;)
猥雑な街だけでなく、キレイな町並みも、もしかして眠っているものはあるかもしれません。
先入観なしにいろんな街の需要を掘り起こしていけば、まだまだ大阪の外国人旅行客が伸びる要素はたくさんあるでしょう。
加えて、奈良なんてのも旅行客にとって、過小評価され過ぎで宿泊事情が改善されれば、もっと旅行客が訪れる余地はあるでしょう。
なかなか路線開設が難しい欧米便に注力するのではなく、まずはアジア。アジアをどんどん伸ばして知名度を上げていけば良いんです。
その上で、B787やエアバス350などの燃費効率の良い航空機が主流になってくれば、長距離路線のLCCやエアカナダルージュなどのレジャー路線に向いた航空会社の路線が現れてくるでしょう。
その時に欧米のような長距離路線に力を入れれば良いんです。そもそも少ない欧米への、欧米からのビジネス需要を求めてはいけません。
日本のエアラインが羽田の国内線で関空で乗継、関空から国際線でという流れをつくれれば良いですが、JALやANAもその気がありません。
長距離路線のビジネスクラスは、料金もかなり高額なのでレジャー利用では、なかなか簡単には利用できません。
一方短距離路線では、ビジネスクラスは格安料金で乗れるチャンスもあり、関空発の路線でもビジネスクラスの需要はあります。
チャイナエアラインやアシアナ航空が最新鋭機のエアバス350やベトナム航空がB787の豪華なビジネスクラスのシートを関空線にも投入するのはそのあらわれでしょう。
けっしてLCCだけが、関空の成長を支えているわけではありません。
関西に限りませんが、訪日旅行客はまだまだ伸びる要素は山ほどあるでしょう。関空をゲートウェイとして、日本各地のまだ知名度の高くない観光地の掘り起こしも大事です。
なにわ筋線が上手くいくかどうかは、とにかく関空の今後の伸びに依存しています。先入観を捨てて、観光需要を拾い上げていけば、これからの関空は明るいでしょう。