東京都江東区には、東西を走る鉄道路線はたくさんあるのですが、区内南北を結ぶ交通アクセスはあまり良くありません。
江東区では近年特に湾岸部の開発が盛んに行われ、多くのマンションが建設され住民が増えています。
昔からの中心部である江東区北部と湾岸の南部の間はアクセスはバスが主流で、渋滞による遅延や所要時間が長くなりがちな「江東区南北交通問題」があります。
この問題を解決するために、越中島貨物線を旅客化するLRT構想があります。ただ、その実現には採算性という大きなハードルがあります。
ターミナル駅を結ぶ鉄道網
鉄道の敷設は、ターミナル駅を結ぶものが利用者数や採算性を考えると主となります。そのため、ターミナル駅を通らない鉄道計画はなかなか実現できないのが普通です。
東京都江東区も、東京都心へ向かう鉄道路線は、JR・東京メトロ・都営地下鉄とたくさんあり充実しています。
朝のラッシュは酷いですが(^_^;)
しかし、江東区の南北を結ぶ公共交通手段は、ターミナル駅を通らないため、鉄道アクセスではなくバスが主流になります。
ターミナル駅を通らない場合は、どうしても利用者数が期待できず、採算性にも問題があるからです。そのため、地下鉄などの鉄道路線はなかなか実現が難しいのです。
越中島貨物線の旅客化は工事が容易
新たに鉄道を敷設となると、工事も容易ではなく多額の費用が必要になってきます。
そのため、明確で工事費用に見合う需要がなければ、なかなか実現が難しく、よりハードルが高くなってしまいます。
ただ、江東区のLRT構想は、そのほとんどの区間を越中島貨物線の線路を使うことになり、費用や工事の容易さを考えるととても優れていると一応いえます。
検討されているルートは、亀戸駅から新木場駅までのおよそ6km。
出典 江東区
検討ルートのうち、越中島貨物線がおおむね3分の2程度になりますので、残り3分の1が新規に線路を敷設することになります。
ただ、貨物線を利用することで、比較的容易にLRTを実現できるとは言えますが、懸念されるものもあります。
バスからLRTにするのですから、速達性や輸送力でバスを上回る必要があります。
特に速達性は住民の多くも期待しますし、速達性を上がるためには、駅間距離をできるかぎり長くする必要があります。
駅間距離を長くすると、現在はバス停がすぐ近くにあった人でも、逆に駅まで結構な距離を歩くようなことも起こってきます。
また、LRTは路面を走るわけですから、途中国道などの主要道路との交差をどのようにするかは重要な問題です。
こちらは永代通りとの交差する踏切です。
こちらは葛西橋通りとの交差する踏切です。
輸送力を増やすために、運行本数を増やしたり、速達性のためにLRTに犠牲になる道路の利便性が犠牲になる場合もあるでしょう。
何せ今の越中島貨物線はすでに貨物の取扱はなく、1日3往復のレール運搬車だけが行き交うだけですから、その違いは大きいです。
そうなれば、交差する道路の交通渋滞にも影響を与え、影響を与えないようにしようと地下化や高架化するとなると、費用がさらにかさみ、実現はさらに遠のくことになります。
貨物線が旅客化する例
貨物線が旅客化する一つの例として、現在工事中の大阪の「城東貨物線」があります。
城東貨物線の旅客化の構想も、1950年ごろからありその実現に長い期間を要していて、1996年にようやく着工されました。
城東貨物線も都心部を迂回するようなルートになり、旅客需要が厳しいですが、新大阪駅というターミナル駅につながることで、少し優位な点はありました。しかし、それでもその実現への道程は険しかったのです。
城東貨物線の旅客化でこのような貴重なものも同時に失くなってしまいましたが(^_^;)
minakoさんの英語垢のアイコン、どなたかは存じませんが、赤川鉄橋ですね。線路と歩道が併置された珍しい鉄橋でした。僕も歩道が廃止になる前に撮りに行ったことがあります。 pic.twitter.com/4JSXn1DcrG
— レオン (@103_reon) July 20, 2017
葛飾区にもある貨物線を利用するLRT構想
貨物線を利用するLRT構想があるのは江東区だけではありません。葛飾区でもLRT建設構想の動きがあります。
葛飾区が南北鉄道路線の調査費を計上 – 東京の新路線構想に動き
葛飾区の場合は、新金貨物線を利用して総武本線小岩駅と常磐線金町駅という南北をLRTで結ぶという構想です。
この計画の実現も気になる所ではあります。印象としては需要は江東区のLRTが多そうで、建設は葛飾区が容易のような感じです。
何れにせよ建設のハードルは江東区も葛飾区のLRTもかなり高く、その実現にはまだまだ長い道のりが必要です。
もちろんこのまま計画が凍結されることも十分にありえるでしょう。
現実的には江東区のLRT構想は現在のところは、事実上凍結になっていて、実現は極めて厳しい状況ではあります。