シンガポールとマレーシア南部の都市ジョホールバル(JB)を結ぶ通勤鉄道が2024年にも開通することになりそうです。
シンガポールとマレーシアの間には国境がありますが、島国で育った日本人は陸続きの国境というものはあまり身近なものではありません。
シンガポールとマレーシアの国境は毎日多くの人が行き交い、シンガポールと国境の街ジョホールバルは同じ都市圏のようになりつつありました。
そんな両都市を結ぶ通勤列車が開通すれば、ますますその結びつきは強いものになります。
シンガポールとマレーシアを結ぶ通勤鉄道が2024年に開通
シンガポールとマレーシア南部を結ぶ通勤鉄道が2024年に開通することが決定しました。
「拡大シンガポール」に商機 マレーシア結ぶ通勤鉄道
シンガポールとマレーシアは元はマレーシア連邦として同じ国という時期もありました。
華人が多いシンガポールがマレーシア連邦から分離独立しましたが、大きな武力衝突があったこともなく、現在はシンガポールとマレーシアの経済的な結びつきは強いです。
ただ、両国の間には当然国境というものが存在し、両国間を行き来するためには、出国入国のための審査があります。
両国の経済的な結びつきを象徴するように、シンガポールとジョホール海峡を隔てたマレーシア南部の都市ジョホールバル(通称JB)の間の国境は1日40万人もの人が行き交います。
両国の国民の場合、入国審査が簡易な手続きで済む取り決めがあるため、現在でもマレーシアからシンガポールに通勤する人も増えています。
また、両国間にはまだまだ物価の差があるため、シンガポール人がマレーシアに買い出しをするケースも良く見られます。
このようにすでに両国間の結びつきはとても強いのですが、両国の間を通勤鉄道が運行されることで、より強固なものとなりそうです。
通勤鉄道と都市開発の一体開発
通勤鉄道はシンガポールとジョホールバルのおよそ4kmを結ぶことになります。シンガポールの建設中の都市鉄道と接続することになり、片道1時間あたり1万人を輸送することができる計画なので、運行頻度も高そうです。
現在シンガポールとジョホールバルの国境はバス移動がメインになりますが、通勤鉄道の完成により利便性が格段に向上しそうです。
なお、出入国審査は乗車時に1回で済ませるようにできることから、マレーシアで出国する場合、鉄道乗車前に出国とシンガポール入国が完了するということです。
さらにマレーシアの首都クアラルンプール(通称KL)とシンガポールを結ぶ高速鉄道も2026年に開通する予定で、鉄道と都市開発の一体開発が両国間で盛んに行われようとしています。
出典 日本経済新聞
越境通勤鉄道では、車両を川崎重工が納入したり、都市開発を三井物産が参画するなど日本企業もこの一体開発に大きな期待をよせています。
運行はシンガポール交通大手のSMRTとマレーシアのプラサナ・マレーシアによる合弁会社が担当します。
過熱気味のジョホールバルの開発
シンガポールの経済発展がめざましく、現在は一人あたりGDPで軽く日本を抜いてしまっています。
両国間で通勤鉄道ができる背景もシンガポールの経済発展によって、すでに自国での開発用地がもはやそれほど残っておらず隣国のマレーシアに開発が拡大しています。
もちろん両国間の経済格差による開発コストの違いも、マレーシア特にジョホールバルの開発が加熱する理由にもなっているでしょう。
JBではすでに2006年から「イスカンダル計画」という巨大開発プロジェクトが開始されています。
「イスカンダル計画」は、一般的な再開発とは異なり、シンガポールの約3倍の面積(東京都と同じ面積)に、約10兆円もの巨額な投資で2005年時点のジョホール州の人口130万人を2025年には300万人にするという計画。
すでに過熱気味のJBの開発ですが、高層のコンドミニアムが立ち並び、イギリスの名門校マルボロカレッジが進出するなどの話題性もあります。
マルボロカレッジは、イギリスのキャサリン妃の母校としても有名で、日本からもマレーシアに移住し、子息をこの名門校に入学させたという人もたくさんいます。
現在でも過熱気味のジョホールバルの開発ですが、今後通勤鉄道が開通し、さらに高速鉄道が開通するとなると、その投資熱に拍車をかけるかもしれません。
ただ、過熱気味のジョホールバルにはいずれ“バブルが崩壊”するという意見も根強くあります。
ジョホールバルが廃墟化?
拡大シンガポール都市圏を形成するはずのマレーシアのジョホールバルですが、その巨額投資に反して、街が廃墟化するという意見。
シンガポールとジョホールバルで、あたかも中国の香港と深センのような巨大都市圏をつくろうという動きですが、将来は必ずしも安泰ではありません。
シンガポールとマレーシアを結ぶ通勤鉄道が、更なる過剰都市を招き、バブル崩壊へと向かうのか、それとも利便性が向上し、あたかもひとつの国のように発展するのか、その行方が気になります。